防水材について防水材料・工法について
はじめに
建築物などの防水に用いられる材料・工法には数多くの種類があります。新規に防水を設計する、あるいは防水の改修を計画する場合は、これら材料の特性、工法の特徴を充分考慮する必要があります。
ここでは、現在国内で使用されている主な防水工法について、できるだけ公平な見方で比較しましたので、工法の検討・設計を行う上での参考にして頂けると幸いです。
各種防水工法の比較
防水工法の分類については、国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書に従って行いました。比較は材料面と工法面の両方から行っています。
アスファルト防水 | 改質アスファルト防水 | シート防水 | 塗膜防水 | |
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概要 | 現場でアスファルトを加熱・溶融し、溶けたアスファルトを下地に流しながらルーフィング類を張り付ける工法。通常この工程を2~4回程度繰り返す。 | ポリマー類で改質されたアスファルト系シートを下地に張り付ける工法。張り付け方には、シートをトーチで炙る方法やシートの粘着性を利用して張り付ける方法等がある。 | 加硫ゴムシートや塩化ビニル系シートを下地に張り付ける工法。張り付け方には、接着剤を使用する方法、機械的に下地に固定する方法等がある。 | 液状の樹脂を下地に塗布し、硬化させて防水層とする工法。通常、不織布などを補強材として併用する。 |
歴史 | 国内では明治時代から施工されており、長い歴史を有する。 | 欧米から導入された工法で、国内での歴史は比較的浅い。 | 昭和30年代の高分子化学の発展とともに広がった工法。 | 材質により異なるがウレタン系はシート防水と同様の歴史。FRP系は昭和50年代頃から広がった。 |
長所 | 積層型なので接合部の信頼性がある。 材料は大量生産されており、安価である。 |
施工時の煙・臭気などの発生が少ない。 アスファルトの持つ欠点が改良されている。 |
工場で生産されるため、品質は一定である。 合成高分子系シートは強度・伸びが大きい。 |
全面シームレスな層になるので、接合部の不安がない。 複雑な部位での信頼性が高い。 |
短所 | 施工時に煙や臭気等の近隣公害が発生する。 高温及び低温時の性能がやや劣る。 |
単層仕様が多く、防水の信頼性は施工者の技能に依存するところが大きい。 下地には軟接着であるため、膨れが発生しやすい。 |
単層仕様が多く、防水の信頼性はシート接合部の処理に依存する。 薄手のシートでは耐衝撃性などがやや劣る。 |
下地の影響を受けやすく、場所により塗膜の厚さのムラが出やすい。 ※FRP系はガラスマットを使用するため厚みムラがでにくい。 |
最適な 用途 |
新築物件で、コンクリート等の保護層が設けられる仕様の場合。 | 改修物件で、既存露出アスファルト防水にかぶせで改修する場合。 | 塩ビシートでは機械的固定工法で既存防水にかぶせで改修する場合。 | 役物等が多く、複雑な形状の屋根に施工する場合。 また、FRP系は露出で重歩行が可能なため、保護層を省いて軽量化を図る場合。 |
注意点 | 施工現場にアスファルト溶融釜を設置するので、煙・臭気・汚れ等への対策が必要である。 | バーナーの取り扱い、指導、管理が難しく、熟練工を要する。 | 強風地域での風対策、鳥害対策等を考慮する必要がある。 | 施工時の溶剤の揮散・臭気の発生等への対策が必要である。 |
塗膜防水工法の比較
塗膜防水工法の中で現在一般的に採用されている、ウレタン塗膜防水、FRP塗膜防水、及びウレタン/FRP複合防水についての比較です。
ウレタン塗膜防水 | FRP塗膜防水 | ウレタン/FRP複合防水 | |
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工法の 概要 |
二液性のウレタン樹脂を混合し、合成繊維不織布などを補強材として下地に塗布する工法。一液性の樹脂を使用する場合もある。 | 液状のポリエステル樹脂に少量の硬化剤を混合し、ガラスマットなどを補強材として下地に塗布する工法。 | ウレタン樹脂を下層に塗布し、上層にFRP樹脂を塗布する複合工法。両層の間には層間プライマーを使用する。 |
工法の 長所 |
樹脂にセルフレベリング性があり、表面が平滑に仕上がる。 塗膜は伸びが大きい。 |
樹脂の硬化速度が速く、面積にもよるが1日ですべての工程を終了させることが可能。 塗膜は強度が大きい。 |
ウレタンの柔軟性とFRPの強靭性の両者の特長を兼ね備えた工法で、従来のFRP防水工法では対応できなかった大面積下地へ適用が可能。 |
工法の 短所 |
樹脂の硬化に長時間を要する。塗り重ねの場合は翌日施工になる場合が多い。 | 樹脂にはスチレン特有の臭気があり、周辺への配慮が必要である。 | FRP塗膜工法同様に臭気に関して周辺への配慮が必要である。 |